「小学1年生は学力において生涯で最も大事な一年。」隂山英男先生に聞いた、小学1年生の学習で大切なこととは?

小学校、中学校、高校、大学と続く学校生活の始まり、小学1年生。この小学1年生が、「生涯で最も大事な一年」だと言い切るのが、長年教育に携わり、内閣官房教育再生会議委員、大阪府教育委員長なども務めたことがある教育クリエイター、隂山英男先生

どうして小学1年生が重要なのか、この一年間の学習でどういった点を意識すべきなのかを聞きました。

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勉強の土台中の土台を固める、それが小学1年生。

  

―まず、先生は小学1年生という時期を「最も大事な一年」と表現されていますよね。

 「教育」を学力という観点で捉えたら、小学1年生は生涯で最も大事な一年。僕は「人生を決める一年」だと思っています。

 

―学力に関して、小学1年生という時期がどうしてそんなに重要なのでしょう。

1年生で勉強が得意だと思ったら、次の2年生の勉強はさほど困難じゃないんですよ。3年、4年もその積み上げになっていく。「勉強が好き」「勉強が得意」という意識でずっと流れていくことができるんです。逆に1年生で「勉強が苦手だ」と思えば、2年生の九九なんて難行苦行。3年生の分数は相当しんどいはず。その後は推して知るべし、算数嫌いが出来上がってしまいます。

  

―1年生で習うことすべてを得意といえるレベルにしなくてはならないのでしょうか。

ポイントがあります。重要なのは、算数で言えば、繰り上がり、繰り下がりの計算がどのレベルでできるか。国語で言えば、ひらがな・かたかながきちんと読めて、鉛筆を使ってスムーズに字を書くことができるか。勉強の土台中の土台ですね。それを固めるのが1年生の時期です。これら基本的・基礎的なことがしっかりできればそれ以外のことは自ずと出来てきます。

 

「やることが増えている」という現状が小学1年生に及ぼす影響。

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―実はとてもシンプルなことなんですね。 

ただ、最近はそれも難しいのかなと。学校でも応用・活用・発表といったカリキュラムも増え、子どもたちからすれば負担が増えたかたちですよね。さらに家に帰っても癒やされることなく塾に行くみたいなことになると、余計にストレスがたまることになるのではと。

  

―確かに、教科書の総ページ数も増えていますよね。子どもがついていけるかを不安に思っている方もいると思います。

やることが多いがために、しっかりとできないといけないことや子どもが躓きやすいことをさらりと流してしまうのが問題です。繰り上がりの計算を例にとります。「8+5」という問題の、①10のかたまりをつくって、②のこった数が一の位になる、という流れは、

①8はあといくつ足せば10になるでしょう。(10-8=2)

②5は2と何に分けられるでしょう。(5-2=3)

というふうに、繰り下がらない引き算を2回連続することになる。ところが、小学1年生のように勉強初期の子にとっては、まず、6-2、7-3などの繰り下がらない引き算が難しい。1回でも難しいのに高速でしかも2回連続やるなんて、それはしんどいですよね。

それなのに、学校の教科書では繰り上がりの足し算は4ページほどで終わります。教科書の量が問題というより、これだけ難しい内容があっという間に終わってしまうことが問題です。週の初めに「9+2」など簡単なものからはじまっても、その週の終わりには「6+7」や「5+6」を解かないといけない。

  

子どもはいろいろなことを同時進行することが苦手。あれもこれも、ではなく基礎が定着するまで繰り返すこと。

 

―そうなると自宅でのフォローが必ず必要になりますよね。ただ、やることが増えているしどんどん授業も進んでいくし、という現実を受け止めると、親は、まんべんなくできるように、次々手を出しがちになる気がします。

基本的・基礎的なことがバチっとできればそれ以外のことは出来てくる。ところがひとつ出来ないと、親は先回りして、あれをやらせないと、これをやらせないと、ってなってくるでしょ?これがいけない。

子どもというのは、いろんなことを同時進行でやるのが苦手です。一つの得意なことに絞り込んだときに大人には真似できない爆発的な学習力を発揮します。だから、余計なことを抜きにして、繰り上がり、繰り下がりの計算とか、文章の読み書きがスッとできるまでやることです。

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子どもの低学力の理由は「理解できない」からではなく「忘れる」から。

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―その基礎的なところを自宅で学習するにあたって、親が学習に関わる際に注意すべき点を知りたいです。

つまずくポイントは決まっているので、そこをおさえること。1年生ならば、繰り上がり、繰り下がりの計算や、文章の読み書きが出来ていないなら、学校の進度は気にせず、ちゃんと理解できるまで、しっかりとやることです。 

教科書の量も増えて、みんなはものすごい量をこなさないといけないと思っているけれど、実はそんなことはない。漢字がいい例です。習うのは、1年でたったの200字、つまり原稿用紙半分です。でも、それができない理由は、一年を通して小分けに習って、覚えきれないまま忘れていくからです。子どもが低学力になる基本的な理由は、「理解できない」からではなく「忘れる」から。だから、ポイントを絞って、繰り返しやることが重要です。

  

できることをよりできるようにすることで、主体的に学習する力も身につく。

 

―確かに、そのほうが、子どもにとっても負担が少ないように感じられます。 

他にも注意したいのは、「さっとできないことは、できない。ようやくできた、はできていない。」ということ。「苦労してやっとできた!」というのはゴールではなく、そこがスタートで、そこから他のいろんなことも出来ていく。だから「できることを、より、さっと、できるようにする」ということが大事です。 

 

ーそれが冒頭の「勉強が好き」になることにつながるということですね。多くの親御さんが「どうやったら自分から勉強する子になれるか」を気にしていると思いますが、その答えにも繋がる気がします。

そうです。基礎が難なくできることで自信がつけば、勉強が好きになり、自分で解決できるという経験が積み重なる。その積み重なった経験が、躓いたときでも立ち向かうタフさをも作ります。躓いても克服することで、主体的に学習する力が身につくはずです。

 

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