心が温かくなる、ちょっといい話ーオトナも読みたい今月の本

心が温かくなる、ちょっといい話ーオトナも読みたい今月の本

毎回テーマに沿って大人も読みたくなるような児童書を紹介する「オトナも読みたい今月の本」。

今回は、「心が温かくなる、ちょっといい話」をテーマに4冊をご紹介します。


  • 『えいっ』 三木卓=作/高畠純=絵(理論社)
  • 『あっ!みーつけたっ!!』 くすのき しげのり=作/大島 妙子=絵(光村教育図書)
  • 『ひいきにかんぱい』 宮川ひろ=作/小泉るみ子=絵(童心社)
  • 『犬どろぼう完全計画』 バーバラ・オコーナー=作/三辺律子=訳/かみやしん=絵(ぶんけい)

『えいっ』

三木卓=作/高畠純=絵(理論社)

幼児から大人まで

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親子の心をつなぐ魔法の言葉

町へでかけたくまの親子。お父さんが、「えいっ」というかけ声をかけると、赤信号が青信号に変わります。魔法をかけたと思ったくまの子は「お父さんってすごい!」と、尊敬のまなざしで見つめるのです。お父さんは、ステッキで次々と「えいっ」というかけ声で、町の中で魔法をかけようとします。でも、信号の色を変えたり、夕暮れの空に星を出したりするのは、魔法でもなんでもありません。くまの子も気づいてしまします。くまの子は、家にもどってきたところで、こんどは自分が「えいっ」というかけ声で、すてきな魔法をかけるのです。幸せな気持ちになれる名作絵本。高畠純さんの絵も魔法のように素敵です。

【作者】―三木卓(1935~ )

東京生まれ。詩人・小説家。早稲田大学第一文学部露文科卒業。1967年に詩集『東京午前三時』でH氏賞、1970年に詩集『わがキディ・ランド』で高見順賞受賞。1973年に小説「鶸」(『砲撃のあとで』)で芥川賞を受賞。以降、数々のすぐれた文芸作品を書く。児童文学作品では、『イヌのヒロシ』(路傍の石文学賞)、『ぽたぽた』(野間児童文芸賞)などがある。

 

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『あっ!みーつけたっ!!』

くすのき しげのり=作/大島 妙子=絵 (光村教育図書)

低学年から大人まで

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こんなお兄ちゃんがいたらいいな

なやみをかかえる子どもたちの応援団長・くすのきしげのりさん、魂をこめた力作を次々と書き続けています。この本の主人公の「ぼく」は、なぜか学校の帰り道で拾った石に動物の絵を書いて集めています。カバみたいな石、キリンみたいな石、ペンギンみたいな石……、という具合。ついに石をつめこんだ服のポケットに穴を開けてパパにおこられてしまいます。でも、「ぼく」が石を集めている理由を聞くと、パパは何も言えなくなりました。その理由はラストシーンでわかります。大島妙子さんの絵も素晴らしく、読み終えた後、心がじんわりと温かくなる作品。

【作者】―くすのきしげのり(1961~ )

徳島県鳴門市在住。鳴門教育大学大学院修了。「心豊かに生きる」をテーマに、大学在学中より始めた創作童話・絵本・詩・童謡など児童文学の創作活動と小学校の教育現場における「徳育」を中心とした教育活動を続ける。『おこだでませんように』『メガネをかけたら』『ネバーギブアップ!』(いずれも小学館)など、作文の課題図書や推薦図書に選ばれる作品が多数あります。

『ひいきにかんぱい』

宮川ひろ=作/小泉るみ子=絵(童心社)

中学年から大人まで

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全力で「ひいき」しよう!

悩んでいる人たちを全力で応援する物語「○○にかんぱい!」シリーズ。今回は「ひいき」することで、応援しちゃう物語です。3年2組では、このたび「ひいき係」を作りました。先生なりたて一年目の内山先生はとっても不安です、そして、学校で給食も食べられず声も出せないさなえちゃんも心配な存在です。そこで、この二人を、クラスみんなで「ひいき」することにしたのです。「ひいき」とは、悪いことじゃなく、はげますこと。新人の先生もうまく先生として務めることができ、声が出せなかったさなえちゃんもついに……。読後感のいい、ハートフルな作品です。

【作者】―宮川ひろ(1923~ )

群馬県出身。小学校の教員をしながら、児童文学の同人誌を創刊し、1969年『るすばん先生』でデビュー。「先生のつうしんぼ」など、学校を舞台にしたユーモラスで温かい作風の作品を数多く書く。1978年赤い鳥文学賞(『夜のかげぼうし』)、1985年新美南吉児童文学賞(『つばき地ぞう』)、1990年日本児童文学者協会賞(『桂子は風のなかで』)、2005年ひろすけ童話賞(『きょうはいい日だね』)などを受賞している。

『犬どろぼう完全計画』

バーバラ・オコーナー=作/三辺律子=訳/かみやしん=絵(ぶんけい)

高学年から大人まで

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やっぱりハッピーエンドがいい

ある日突然、自分たちの家がなくなってしまったらどうするでしょう。そんな悲劇が、少女ジョージナに起こりました。パパが行方をくらまし、ママと弟と親子三人の車中生活の日々。宿題もできない、おしゃれも無理、お弁当なんて最悪。秘密にしていた学校の先生や友達も、異変に気づき始めています。頑張っているけれど、ママの稼ぎだけじゃこの生活からは永遠に逃れられません。早くふつうの生活をとり戻したいと願うジョージナの目に飛び込んできたのは、行方不明の犬に高額の懸賞金を出す張り紙。……ひらめきました! この時からジョージナは「犬どろぼう完全計画」を毎日ノートに書きはじめます。でも、実行は難しいことだらけ、そして、その結末は……。

【作者】―バーバラ・オコーナー(1958~ )

アメリカ・サウスカロライナ州グリーンビル出身。作家。サウスカロライナ大学卒業後、UCLAで児童文学の創作を学ぶ。ユーモラスで心温まる楽しい物語を書いている。日本で翻訳紹介されている作品は、「スモーキー山脈からの手紙」「犬どろぼう完全計画」「パラダイスに向かって」など。「犬どろぼう完全計画」は、韓国で映画化され話題を呼んでいる。

秋深まってくる時期、ちょっといい話を家族で。

いかがでしたでしょうか。秋のにおいが少し冷たい風と共に吹き抜けるこの時期、読書を通して家族でほっこり温まってみてはいかがですか?

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著者プロフィール

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佐藤友樹
小学館の通信教育「名探偵コナンゼミ」の作問者。予備校講師、受験塾講師などを経て、国語問題の作成および分析のプロとして活躍。言葉への造詣が深く、愛情をもった指導に定評がある。著書に、ドラえもん学習シリーズ『ドラえもん国語おもしろ攻略 百人一首を楽しもう』『ドラえもん国語おもしろ攻略 敬語早わかり』(ともに小学館)など多数。

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