オトナも読みたい!今月の本 ー出会いの季節にぴったりー 面白い関係を描いた作品

大人が読んでも面白い児童書をテーマに沿ってご紹介する「オトナも読みたい!今月の本」。

4月は新しい出会いがたくさんありますね。出会いの季節にちなんで、「敵か味方か、友だちか」、面白い設定の「関係」をえがいた作品を紹介します。

『ないしょのおともだち』

ビバリー・ドノフリオ=文/バーバラ・マクリントック=絵(ほるぷ出版)

 幼児から大人まで 

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ないしょだから、ときめく。

1950年代を思わせるアメリカの絵本です。

少女マリーの住む大きな家の片隅に、小さなネズミの家族が住んでいます。家族構成も同じです。

子ねずみは親から人間に近づかないように、少女マリーも親からねずみに近寄らないように厳しく言われています。あるとき、お互いの存在を知ることになりますが、それは秘密にしています。

見開きでリンクするふたりの日々

この本では、「少女の日常生活」と「ネズミの日常生活」が並行して進んでゆきます。

ふたりが出会い、お互いの関係を秘密にしたままお互いが巣立つまで、それぞれの日常がゆったりと流れていく様子が描かれていて、読む側の心も満たされます。細部までていねいに描かれた絵が実に品がいいです。すばらしい作品と思います。


【作者】―ビバリー・ドノフリオ(1950~)小説家。絵本作家。米国コネチカット州ウェズリアン大学卒業後、コロンビア大学の創作科で芸術学修士を取得。自伝的小説『サンキュー、ボーイズ』はベストセラーとなり、映画化もされた。『ないしょのおともだち』(ほるぷ出版)で子ども向けの作品にも進出。バーバラ・マクリントックとのコンビの絵本が好評で、本作品の姉妹篇「ないしょのかくれんぼ」もおすすめの絵本。


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『ライギョのきゅうしょく』

阿部夏丸=作/村上康成=絵(講談社)

 低学年から大人まで 

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今日から仲良くできない関係と言われたら…

ドーナツ池のライギョとタナゴは、仲良く遊ぶ友だちでした。

ところが、さかな学校の1年生になってから、その関係がおかしくなります。ライギョは学校で、追いかける授業を受け、タナゴは学校で、隠れたり逃げたりする授業を受けるのです。

はじめは、おたがいの授業のことを楽しく語り合うのですが、やがて、この授業の本当の意味を知ることになります。タナゴはライギョに食べられないために逃げる授業を、ライギョはタナゴを食べるために追いかける授業を受けていたのです。

なかよしだったタナゴは「ライギョのきゅうしょく」なのだと教えられ、困ります。食べる・食べられる関係のなかで二匹の選んだ生き方は…。

お互いの生き方に深く向き合ったふたり

現実を知った二匹は大変心を痛めますが、ドーナツ池の生き物たちに触れながら、それぞれの種が生きていくにはどうしたらよいのかを学び、よく考え、それぞれの決断を出します。

それまで何の意識もせずに仲の良い友だちとして付き合ってきた二匹が、池の生態系などからお互いを理解していく場面では、ところどころ心に衝撃を受けながらも、答えを求めて突き進む彼らの心情が見事に描写されています。

お互いをよく知り、前向きに歩んでいくふたりの物語。

多くの方がそれぞれの道を歩き出す春にピッタリの1冊です。


【作者】―阿部夏丸(1960~ )作家。 愛知県豊田市出身。名古屋芸術大学卒業。幼稚園絵画講師、書店店長などを経験。川と子供を描く児童文学作品が注目を浴び、「泣けない魚たち」で第11回坪田譲治文学賞・第6回椋鳩十児童文学賞をダブル受賞、「オタマジャクシのうんどうかい」で第14回ひろすけ童話賞を受賞。複雑な子供たちの関係を描く作品は、中学入試にも良く出題されている。


 

『あらしのよるに』

木村裕一=作/あべ弘士=絵(講談社)

 中学年から大人まで 

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複数メディアで展開された大ヒット作品

今回ご紹介するのはヤギとオオカミの友情を描いたシリーズ作品『あらしのよるに』。1995年の第42回産経児童出版文化賞JR賞および第26回講談社出版文化賞絵本賞受賞作品であり、アニメや映画、舞台など複数のメディアで展開されているので、すでに皆さまおなじみの作品かもしれません。

この作品の魅力はなんといっても、ヤギとそれを襲うはずのオオカミの「友情」を描いた点です。

ヤギとオオカミの垣根を越えた友情物語

あらしの夜に出会った、オオカミのガブとヤギのメイ。

あらしをのがれるために入った真っ暗な小屋の中、お互いの正体も知らないまま言葉を交わして友達になり、また後日会う約束をして別れます。そして、約束の場所で再会し、初めてそこでオオカミとヤギであることが明らかになります。

このあと、変わらない友情を持ち続けようとするのですが、オオカミの食欲、ヤギの猜疑心、仲間たちに知られることへの恐怖など、さまざまな困難を抱えて友だちの関係も危うくなっていきます。

全7巻のシリーズは、ユーモラスな会話を交えて読み応え満点のストーリー。傑作です。



【監修】―木村裕一(1944~)東京都生まれ。多摩美術大学卒業。造形教育の指導、テレビ幼児番組のアイディアブレーンなどを経て、絵本・童話作家に。『あらしのよるに』(講談社)で講談社出版文化賞絵本賞、産経児童出版文化賞、JR賞受賞。全7巻のシリーズとなった同作品は映画化、アニメ化もされ「日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞」を受賞。絵本・童話創作に加え、戯曲やコミックの原作・小説など広く活躍中。著書は600冊を超え、国内外の子どもたちに読み継がれている。


『チームふたり』/(学研)

吉野万里子=作/宮尾和孝=絵

 小学校高学年から大人まで 

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二人で作り上げる「チーム」が輝くとき

卓球部を舞台にしたスポーツ小説ですが、部員には先輩・後輩、性格や能力のちがいがあって、どのメンバーとダブルスを組んで戦うのかは大問題。

一番年下の弱い卓球部員の純と組むことになった主人公の大地は、キャプテンとなって「チーム」として戦うふたりの関係に悩みます。

ときに足を引っ張られ、家庭の事情にも苦しめられながら、ふたりにとってベストな「チーム」のカタチを見つけていこうと奮闘します。

物語としても、たいへん面白く読めます。「チーム」シリーズの続編もあります。


【作者】―-吉野万里子(1970~ )小説家、脚本家。 神奈川県逗子市出身。フェリス女学院高等学校、上智大学文学部卒。新聞社、出版社などで編集者を務めた。2002年「葬式新聞」で日本テレビシナリオ登龍門優秀賞受賞。2005 年『秋の大三角』で第1回新潮エンターテインメント新人賞(現大賞)受賞。現在は、ヤングアダルト作品、児童文学作品へも活動の場を広げ、卓球部を舞台にした『チームふたり』は好評を博し、シリーズ化されている。

 

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